高松地方裁判所 昭和47年(ワ)299号 判決 1976年3月26日
原告
山本義雄
被告
中讃通運株式会社
ほか一名
主文
一 被告らは、各自、原告に対し、金七七万三、九八〇円及び内金六七万三、九八〇円については昭和四六年三月一日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを三分し、その二を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。
四 この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。
事実
(当事者の求めた裁判)
原告は、「(一)被告らは、各自、原告に対し、金一五〇万二、三二四円及び内金一三五万二、三二四円に対する昭和四六年三月一日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。(二)訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決及び右(一)項について仮執行の宣言を求め、被告らは、「(一)原告の請求を棄却する。(二)訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。
(当事者の主張)
一 原告の請求原因
(一) 事故の発生
原告は、昭和四六年一月五日午前六時四〇分頃、原告所有の普通乗用自動車(番五に三七〇一、以下原告車という。)を運転し、大川郡白鳥町字湊の湊大橋上を進行中、後方から進行して来た被告浜田洋二(以下被告浜田という。)の運転する貨物自動車(番一あ三八八七)(以下被告車という。)に追突され、その結果むち打損傷の傷害を受けるとともに、原告車は全壊した。
(二) 被告らの責任
1 右追突は、被告浜田が前方を注視する義務および適当な車間距離を置くべき義務があるのにこれを怠つたことによる。
従つて、被告浜田は民法七〇九条による損害賠償責任がある。
2 また、被告中讃通運株式会社(以下被告会社という。)は、被告車を所有し、これを自己のため運行の用に供していた。そして本件事故当時、被告浜田は被告会社のトラツク運転手であり被告会社の業務のために被告車を運転していた。
従つて、被告会社は、自動車損害賠償保障法(以下自賠法という。)三条および民法七一五条による損害賠償責任がある。
(三) 損害
1 人的損害 金五八万三、五二四円
(1) 治療費関係 金二万九、一二二円
原告は、右受傷により昭和四六年一月六日から同年二月五日まで入院し、その後引き続き一か月間通院し、その間に次の各金員を支出した。
(イ) 診断書作成料 金八〇〇円
(ロ) 付添看護料 金八、〇〇〇円
(ハ) 毛布・寝間着等購入費 金一万二、〇四〇円
(ニ) 栄養食料費 金六、二〇〇円
(ホ) 通信費 金二、〇八二円
合計 金二万九、一二二円
(2) 休業損害 金二五万四、四〇二円
原告は、高松バス株式会社の運転手として稼働し、事故当時一か月金一二万七、二〇一円の収入を得ていたが、本件事故による入院及び通院のため二か月間欠勤のやむなきに至り、その間合計金二五万四、四〇二円の収入を得ることができなかつた。
(3) 慰藉料 金三〇万〇、〇〇〇円
原告は、現在もむち打損傷の後遺症状が頑固に残存し、不眠症に悩まされ、事故前のように日常の勤務に精勤することができない。その慰藉料は金三〇万〇、〇〇〇円が相当である。
2 物的損害 金七六万八、八〇〇円
(1) 原告車両の損害 金七五万〇、三〇〇円
原告車は、本件事故により全壊し、修理不能となつたので廃車せざるを得なかつた。事故当時、原告車は、新車であつて、その価額は金七五万〇、三〇〇円(車両代金五五万〇、〇〇〇円、ステレオ代金二万七、〇〇〇円、右取付代金一、三〇〇円、クーラー代金一六万〇、〇〇〇円、右取付代金一万二、〇〇〇円、合計金七五万〇、三〇〇円)であつた。
(2) 原告車の運送賃等 金一万八、五〇〇円
原告は、被告会社の要求により原告車の運送費等として次の費用を支出した。
(イ) 牽引運送賃 金一万五、〇〇〇円
(ロ) 神戸・高松間のフエリー航送賃 金三、五〇〇円
合計 金一万八、五〇〇円
3 弁護士費用 金一五万〇、〇〇〇円
(四) そこで、原告は、被告らに対し、各自、右損害金合計一五〇万二、三二四円及が内金一三五万二、三二四円に対する本件不法行為の後である昭和四六年三月一日から支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 被告らの答弁
(一) 請求原因(一)及び(二)の各事実は認める。
(二) 請求原因(三)1(1)のうち、前文中の原告の入院期間は昭和四六年一月六日から同年二月六日までの三二日間、通院期間は同月七日から同年三月四日までの二六日間(うち通院回数一八回)である、(ロ)の事実は認めるが、(イ)及び(ニ)の事実は知らない、(ハ)及び(ホ)の事実は所謂入院雑費にあたるものであるが、非消耗品を含んでいる点相当でなく、入院雑費は一日金二〇〇円の割合による入院期間三二日分合計金六、四〇〇円が相当である。
同(三)1(2)の事実中、原告の月収額及び欠勤期間は否認し、その余の事実は認める。原告の事故前三か月の収入(除賞与)は、金三〇万七、五四六円であつて、欠勤期間は昭和四六年一月七日から同年三月二日まで五五日間であるから、その間の逸失利益は合計金一八万三、八五九円である。
同(三)1(3)の慰藉料の数額は争う。
同(三)2のうち、(1)の事実は知らない、(2)の事実は否認する。
同(三)3の事実は争う。
三 被告らの抗弁
(一) 弁済の抗弁
被告会社は、原告に対し、人的損害の内入金として、昭和四六年二月一三日金一〇万〇、〇〇〇円、同年三月九日金一〇万〇、〇〇〇円合計金二〇万〇、〇〇〇円を支払つたから、原告の人的損害から右金員を控除すべきである。
(二) 和解契約の抗弁
被告会社は、原告との間で、原告の物的損害について次のとおり和解契約が成立した。
1 原告と被告会社取締役で被告会社の代理人である徳田元は、昭和四六年二月中旬、物的損害について協議し、被告会社としては、事故当時の原告車の価額金三四万〇、〇〇〇円から事故後の原告車の価額金一万〇、〇〇〇円を控除した金三三万〇、〇〇〇円の弁償を申入れたところ、原告から原告車と同車種同年式の車両を購入して欲しいとの申出があつたので、この申出を承諾し、車両の購入方法は被告会社が大阪市内の大西自動車店を原告に紹介し、原告において適当と認める中古車を買入れ、その代金を被告会社が支払うことで合意が成立した。
2 原告は、被告会社の紹介により、同年三月一日、右自動車店に赴き、代金三三万〇、〇〇〇円の日産サニー一台(車台番号B一一〇―〇一〇二七五、以下本件中古車という。)を購入した。そこで、被告会社は、同月五日右代金三三万〇、〇〇〇円を同店に支払つて、その義務を完全に履行した。
3 しかるに、原告は、その数日後、本件中古車が気に入らないと言つて、一方的に右和解を破棄し、被告会社へ本件中古車を搬入した。そこで、被告会社は、右本件中古車を約一年間保管したが、原告が引取らないため、価格の低下による損害の拡大をおそれて、昭和四七年三月一五日金一四万〇、〇〇〇円で他に売却した。
以上のとおり、被告会社は、前記和解契約上の義務を完全に履行しているから、原告の物的損害についての賠償義務はない。
三 抗弁に対する原告の答弁及び主張
(一) 被告らの抗弁(一)(弁済の抗弁)の事実は認める。
(二) 被告らの抗弁(二)(和解契約の抗弁)のうち、昭和四六年二月中旬ころ、原告と被告会社代理人徳田元との間で、被告会社が原告に原告車と同車種、同年式の車両を買い与える旨の合意が成立し、同年三月一日原告が被告会社から本件中古車の引渡を受けたことは認めるが、その余の事実はすべて争う。
被告ら主張の和解契約は、要するに、被告会社は、原告に、全壊した原告車の金銭賠償に代えて原告車と同車種、同年式、同程度の車検のある中古車を引渡すという代物弁済の約定であつた。しかるに、原告が被告会社の新開茂雄から引渡しを受けた本件中古車には車体番号、車検がなかつたので、原告は、右新開に対し、車検の交付を要求したところ、同年三月五日ころ、右新開から車検を交付できないので引渡した本件中古車を返還するようにとの連絡があつたので、直ちにこれを返還した。このように、被告会社は、和解契約における義務を忠実に履行せず、車検を交付しなかつたのは勿論、一旦引渡した本件中古車まで引き上げたのであるから、右契約は目的の不到達により消滅した。従つて、被告らの抗弁は理由がない。
(証拠関係)〔略〕
理由
一 事故の発生及び被告らの責任
請求原因(一)(事故の発生)及び(二)(被告らの責任)の各事実については当事者間に争がない。
二 原告の損害
1 人的損害 金二五万〇、二三〇円
(1) 治療費関係
成立に争いのない甲第一三号証、乙第一号証、原告本人尋問の結果を総合すると、原告は、本件事故による受傷のため事故の翌日である昭和四六年一月六日から同年二月六日までの三二日間宇田外科医院に入院して治療を受け、同月七日から同年三月四日までの二六日間同医院に通院(ただし、通院実日数二八日)したことが認められる。
(イ) 診断書作成料 金八〇〇円
成立に争いのない甲第一号証に原告本人尋問の結果を総合すると、原告は、本件受傷による診断書二通の作成料として金八〇〇円を支出したことが認められる
(ロ) 付添看護料 金八、〇〇〇円
原告が本件受傷による入院の際の付添看護料として金八、〇〇〇円を支出したことは当事者間に争いがない。
(ハ) 毛布・寝間着等購入費 金一万二、〇四〇円
成立に争いのない甲第三号証の一、二、原告本人尋問の結果を総合すると、原告は、右入院の際、入院に必要な毛布二枚(一枚三、五〇〇円)、寝間着二枚(一枚一、四〇〇円)、肌着二枚(一枚四七〇円)、こ下二枚(一枚四五〇円)、パンツ二枚(一枚二〇〇円)を代金合計金一万二、〇四〇円で購入した事実が認められ、右認定に反する証拠はない。
被告らは、右物品には非消耗品が含まれているから、被告らにその全額の賠償を求めるのは相当でない旨主張する。しかし、不法行為によつて受傷した被害者が、傷害治療のため入院し、その入院に必要な物品を購入したときは、被害者において、その入院を利用して退院後も使用を継続する目的や加害者に高額の賠償を求める手段などとして、特に高価な物品を購入したというような特段の事情のないかぎり、加害者に対し物品購入費の全額の賠償を求め得ると解すべきところ、本件において、原告の購入した前記物品が特に高価なものとは認められないし、また、他に右の特段の事情も認められないから右主張は理由がない。
(ニ) 栄養食料費 金六、二〇〇円
成立に争いのない甲第四号証の一、二、原告本人尋問の結果を総合すると、原告は、前記入院中に栄養食を必要とし、その費用などとして金六、二〇〇円を支出したことが認められる。
(ホ) 通信費
原告本人尋問の結果によると、原告は、前記入院中、被告会社に対し、電話で原告の入院費等の支払について交渉した事実が認められる。しかし、原告提出にかかる甲第五号証の一、二(いずれも電話料金の請求書で、その成立については当事者間に争いがない。)は、いずれも基本料金を含む電話料金の請求書であつて、この書面から直ちに原告が右交渉のためにどの程度の電話料を要したのか確定できないばかりでなく、本件の全証拠によつても原告主張の電話料を認めるに足りない。
(2) 休業損害 金二二万三、一九〇円
成立に争いのない甲第一一号証、乙第二号証及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、高松バス株式会社の運転手として稼働していたが(この事実は当事者間に争いがない。)、本件事故による受傷のため、昭和四六年一月七日から同年三月二日までの五五日間欠勤したこと、そして、原告は、昭和四五年一〇月、一一月、一二月の三か月間に同会社から給与及び賞与(一一万五、四〇〇円)として合計金四二万二、九四六円の支給を受けていたことが認められるから、事故当時における原告の一日の収入は金四、〇五八円(ただし、賞与についてはその支給対象期間を昭和四五年七月一日から同年一二月三一日とみて算出した。)となる。従つて、原告の前記五五日間における休業損害は金二二万三、一九〇円となることが計算上明らかである。
(3) 慰藉料 金二〇万〇、〇〇〇円
本件事故の態様、殊に本件事故発生について原告にはなんら過失が認められないこと、原告の前記傷害の部位、程度、入・通院の期間、前記甲第一三号証及び原告本人尋問の結果により認められる原告の不眠症状、本件事故による損害賠償の交渉の経緯並びに原告が本件事故により欠勤したため昇給について多少不利益を受けていることその他本件にあらわれた一切の事情を総合考慮すると、原告に対する慰藉料は金二〇万〇、〇〇〇円をもつて相当と認める。
(4) 損害の填補
被告会社が原告に対し人的損害の内入金として昭和四六年二月一三日金一〇万〇、〇〇〇円、同年三月九日金一〇万〇、〇〇〇円合計金二〇万〇、〇〇〇円を支払つたことは当事者間に争いがない(被告らの抗弁(一))。そこで、前記(1)ないし(3)の人的損害の合計金四五万〇、二三〇円から右の弁済金を控除すると、その残金は金二五万〇、二三〇円となる。
2 物的損害 金四二万三、七五〇円
(1) 原告車両の損害 金四〇万八、七五〇円
原告車が本件事故により全壊したことは前記のとおり当事者間に争いがなく、そして、証人太田秀雄の証言により真正に成立したと認める乙第三号証に同証人の証言を総合すると、原告車は右のように全壊したことにより修理不能に陥つたことが認められ、右認定に反する証拠はない。
被告らは、原告と被告会社との間に、物的損害について和解契約が成立し、その契約上の義務を履行したから、被告らに右損害の賠償義務はない旨主張(被告らの抗弁(二))するので、まず、この点につき判断する。原告と被告会社代理人徳田元との間で、昭和四六年二月中旬ころ、被告会社が原告に原告車と同車種同年式の車両を買い与える旨の合意が成立し、同年三月一日原告が本件中古車の引渡を受けたことは当事者間に争いがなく、この事実に証人松永菊一の証言により真正に成立したと認める乙第四号証、証人徳田元の証言により真正に成立したと認める乙第五、第六号証、証人渡部浅一、同徳田元、同松永菊一の各証言、原告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、次の事実が認められる。
すなわち、原告と被告会社代理人徳田元との間で、昭和四六年二月中旬ころ、原告車の全壊による損害賠償について交渉が行なわれた結果、被告会社は、原告車の金銭賠償に代えて原告の選択する原告車と同程度(同車種、同年式等)の車両を大阪市内の中古車販売店で購入して原告に引渡すこととし、その購入手続及び引渡は被告会社の大阪営業所長新開茂雄が担当する旨の合意が成立したこと、そこで、原告は、右新開とともに大阪市に赴き、同人から同年三月一日、原告の選択した本件中古車(販売店大西自動車工業所、代金三三万〇、〇〇〇円)の引渡を受けたが、その車両には車検がなかつたので、新開が一か月の自賠責保険の加入手続をし、仮ナンバー(臨時番号)のまま高松市に持ち帰つたこと、被告会社は、同月五日、右販売店に代金三三万〇、〇〇〇円を支払つたこと、そのころ、原告は、新開に対し、本件中古車の車検手続を要求したところ、同人から、被告会社と交渉したが同会社が車検の費用を負担してくれないから右車両を返還するようにとの通知があつたので、本件中古車を新開に返還したことの各事実が認められ、右認定に反する証人徳田元、同松永菊一の各供述部分は原告本人尋問の結果に照らしてたやすく信用できないし、他に右認定を左右するに足る証拠はない。
右の事実によれば、原告と被告会社との間に成立した合意(和解)は、原告車の金銭賠償に代えて原告車と同程度、つまり同車種、同年式、同車検期間のある中古車を引渡すという代物弁済の約定であることが認められるから、被告会社としては、単に原告車と同車種、同年式の車両を引渡すのみでは足りず、原告車と同程度の車検期間のある車両を引渡し、かつ、原告車のように登録を必要とする車両にあつてはその登録手続を完了しなければならない義務があることは明らかである。しかるに、被告会社は、本件中古車について、単に一か月の自賠責保険に加入し、仮ナンバー(臨時番号)をつけたのみで、なんら車検手続や登録手続をしていないまま返還を求めているのであるから、代物弁済の義務を履行したとはいえず、結局被告会社の金銭賠償債務は消滅しなかつたというほかはない。従つて、被告らの右抗弁は採用できない。
そこで、原告車両の損害について検討する。前記乙第三号証、成立に争いのない甲第九号証、原告本人尋問の結果を総合すると、原告は、昭和四五年二月二四日、原告車を代金五五万〇、〇〇〇円で購入し、更に代金二〇万〇、三〇〇円を支払つてステレオ及びクーラーを取り付け、これを自己の運行の用に供しており、事故当時における走行距離は一万四、四五七キロメートルであつたこと、そして車検期間は昭和四七年二月二三日までであることが認められる。ところで、右乙第三号証には、本件事故当時における原告車の中古車市場における取引価額は金三四万〇、〇〇〇円である旨の記載があり、証人太田秀雄は同趣旨の証言をしている。しかしながら、前記のように被告会社が代金三三万〇、〇〇〇円で購入した原告車と同車種、同年式、同設備(ステレオ、クーラー付き)の車両には車検がないことに鑑みると、前記の乙第三号証の記載と証人太田秀雄の証言は原告車の車検期間をも含めた取引価額の査定とは認め難い。そして、証人松永菊一の証言によると、車検(自賠責保険金を含む。)に要する費用は金一四万〇、〇〇〇円程度であることが認められるから、事故当時における原告車の価額は次のとおり金四一万八、七五〇円(ただし、原告車の車検の残存期間を一三・五月とみる。)と認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
340,000円+(140,000円×13.5/24)=418,750円
ところで、証人徳田元の証言によると、事故後における原告車の残存価額は金一万〇、〇〇〇円であつたことが認められるから、前記の金四一万八、七五〇円から右金一万〇、〇〇〇円を控除した残金四〇万八、七五〇円が原告車が全壊したことによる損害となる。
(2) 原告車の運送費等 金一万五、〇〇〇円
成立に争のない甲第七号証、原告本人尋問の結果によれば、原告は、原告車を事故現場から高松日産まで牽引するための費用として金一万五、〇〇〇円を支出したことが認められる。
次に、成立に争いのない甲第六号証、原告本人尋問の結果によると、原告は、大阪で引渡を受けた本件中古車を神戸から高松に航送し、その費用金三、五〇〇円を支出したことが認められるが、この費用は、前記の和解に関するものであつて、本件事故による損害とは認め難いし、他に右費用が本件事故による損害であることを認めるに足る証拠はない。
3 弁護士費用 金一〇万〇、〇〇〇円
原告本人尋問の結果に弁論の全趣旨を総合すると、原告が原告訴訟代理人に本件訴訟を委任し報酬を支払う旨約束したことが認められる。そして、本件訴訟の難易、請求額、本訴において認容する額その他諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係にある弁護士費用な金一〇万〇、〇〇〇円が相当である。
三 結論
以上のとおりであつて、原告の本訴請求中、被告らに対し、各自、金七七万三、九八〇円(1人的損害金二五万〇、二三〇円、2物的損害金四二万三、七五〇円、3弁護士費用金一〇万〇、〇〇〇円)及び内金六七万三、九八〇円については本件不法行為後である昭和四六年三月一日から支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるから正当としてこれを認容し、その余の部分は理由がないから棄却することとし、民事訴訟法八九条、九二条、九三条、一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 山口茂一)